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民生委員会視察 地域医療連携について(尾道市)

 10月14日、15日、尾道市立市民病院と公立みつぎ総合病院を視察しました。視察の目的は、地域医療連携です。病気になった市民(患者)の退院後のQOLを高め、また、再発や新たな病の予防につなげるには、急性期病院とかかりつけ医、医療と介護の連携は欠かせません。医療従事者、介護者の多くがそのことを認識していると思われますが、実際にはなかなかうまく連携がとれていません。そこで、先進的に取り組む尾道市の現状を伺いました。

尾道市の人口は、約145千人。高齢化率32.5%、高齢独居率13.3% 相模原市よりずっと高齢化が進んでいます。尾道市の急性期医療拠点は3つ。尾道市立市民病院と公立みつぎ総合病院、そして、JA尾道総合病院です。

視察先の尾道市立市民病院では、1994年(平成6年)から尾道市医師会が中心になって、高齢者の在宅医療システムの構築に取り組んできたそうです。お手本になったのは、公立みつぎ総合病院の地域包括ケアシステムとヨーロッパの取り組み。医師会の医師たちが定期的な会合をもって(時には酒を酌み交わしながら)、在宅主治医と急性期病院との連携や在宅チーム医療を可能にする多職種協働のシステム化を図ってきたとのことです。

「尾道方式」とは、退院前ケアカンファレンスのことを言います。急性期病院から在宅、施設、療養型病院へ患者・家族が安心して退院できるように切れ目のない医療、看護、福祉、介護サービスを提供するために、多職種の情報交換、情報共有の場(ケアカンファレンス)を設けていました。みな多忙な中、ひとりひとりの患者に時間が割けるのかが疑問でしたが、集中して15分間で行えるようにしているとのこと。効率的な会議とするため、ケアカンファレンスまでに、地域医療連携室やケアマネなどが中心になって、各専門職と必要な調整を行い、資料やサービス計画をもって会議に臨んでいました。患者や家族が同席し、関わる専門職やスタッフが一堂に会することで、当事者の希望や家族の思いを理解し、ケアのポイントや緊急時の対応等について共通認識を持つことができ、また、互いの信頼関係が得られ、その後のケアもスムーズになり、安心感も生まれるということです。

なぜこのシステムが根付いたのか。元医師会長(片山医師)の強力なリーダーシップが大きいとのこと。その元医師会長が参考にされたのが、当時は隣接自治体であった御調町の国保病院(現在は尾道市と合併し、病院名も公立みつぎ総合病院となっている)。2つ目の視察先です。

 

全国から注目される地域包括ケアシステムは、介護保険制度もない今から40年以上も前、御調町の国保病院に赴任した一人の外科医(山口医師)の、「患者を寝たきりにさせない」という強い思いから始まっていました。救急車で搬送された患者に緊急手術を施し、リハビリを行って無事退院させても、1~2年後に寝たきりの状態で再入院してきます。病気の治療だけでは十分とは言えない。原因は何なのか。調査した結果、判明した原因は以下の4つだったそうです。

 庭内の介護力不足(三世代で暮らしていても、昼間は高齢者のみ)

 不適切な介護(トイレが離れにあって、オムツにしてしまう)

 不適切な療養環境(段差が多い日本の住居)

 閉じこもり会話がない

この4つは、その時代の御調町のことと片づけることはできません。なぜなら、核家族化が進んだ現在の、老々介護、高齢者や障害者の単身世帯と全く同じ状況だからです。高齢化が進むにつれ、今後ますますその傾向は強まっていきます。

 

つくられた寝たきり、つくられた褥瘡、つくられた失禁、つくられた認知症様状態。これらを防ぐことはできないかと考えた山口医師は、「医療の出前」を行うことにしたそうです。当時の在宅医療は、往診のみであり、介護保険制度もない、ましてや訪問看護や訪問リハビリという呼び方も、診療報酬もない時代に、です。患者や家族には、家の中を見られたくない、他人の世話になりたくないと拒否されるケースもあったそうです。

数年、試行錯誤する中で、サービスを受ける側と提供する側に信頼関係がないと成り立たないことがわかっていきます。そこで、訪問看護を専従のスタッフにし、住民との信頼関係を築くのがうまい保健師を加え、リハビリスタッフも加えて、「寝たきりゼロ作戦」が始めたそうです。特筆すべきは、保健福祉センターが病院に併設されていること。「寝たきりゼロ作戦」は、医療だけでできるものではありません。福祉の壁を崩すため、行政改革で役場の一部を病院内に持ってきて、住民課の福祉担当部門、社会福祉協議会のホームヘルパー、厚生課の保険担当部門の保健師等、国保担当部門が集結させ、まさにチームプレーができる環境を整えたのです。介護保険制度が始まる前の1984(昭和59)年頃から、在宅ケアに関するさまざまな保健・医療・介護・福祉の専門職が集まって、ケアカンファレンスが行われていたというから、驚きです。

「寝たきりゼロ作戦」は、開始後56年で効果が表れ、10年後には寝たきりが三分の一にまで減少したとのこと。保健師の割合は、旧尾道市域より手厚いそうですが、現在もそれは維持されています。病院事業が黒字運営だからこそとのこと。

合併してもこの御調町スタイルが尊重されている意義は大きいと考えます。

 

病院事業は、平成15年から公営企業法の全部適用を受けていました。病院から2.5キロほど離れた場所にある保健福祉総合施設(特養、介護老人保健施設、居宅介護支援事業所、デイサービスセンター、リハビリテーションセンター、ケアハウス、グループホーム、福祉人材研修センター、老人性認知症センターなど)も運営しています。地域包括ケアシステムがうまくいく背景には、ひとりひとりの状況に合わせた施設の選択肢が整っていることも大きな要因だと思われます。国保病院に赴任した一人の医師による医術の道の追求が、地域や自治体のあり方を変えていったのです。

 

公立みつぎ病院の在宅ケアは、医師の訪問診療、訪問看護師、保健師、リハビリスタッフによるサポートはもとより、薬剤師による訪問服薬指導、管理栄養士による訪問栄養指導等も行われ、場合によっては、歯科スタッフも加わっています。ケアマネージャーが連携を取るのはもちろんのこと、そこに住民ボランティアも加わって、まさに地域全体の包括ケケアシステムとなっていることに驚かされます。看護師と介護士によるナイトパトロール、多職種によるケアカンファレンスも実施。また、健康づくりや疾病の予防にも力が注がれていました。この点でも一歩先を行っています。

「従来の医療は、病気の治療に偏ってきたきらいがある。本来医療とは、治療だけでなく、疾病の予防から治療、さらにその後のリハビリ、ケア(介護)までを含む包括的なものが望ましい。高齢者にとっては、特にそうである。」

と、山口医師(243月に勇退し、現在は名誉顧問)は記していらっしゃいます。

 残念ながらご本人に会うことはできませんでしたが、説明や案内を通じて、その意思は医師やスタッフたちにしっかりと受け継がれていると感じました。

 市立病院がない本市ですが、めざすべき地域医療連携のあり方は、今回の視察で明確になりました。改善に向けてひとつひとつ取り組んでいきたいと思います。(2014.10.16)

 

 

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