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視察報告:地域産材の活用、森林での市民活動

委員長を務める水源地域対策特別委員会の視察。

視察の1日目は、府域の75%(34万ha)森林という京都府。
森林を府民共有の貴重な財産と位置づけ、「豊かな緑を守る条例」(平成17年)を制定。積極的に森を守り育む運動、「京都モデルフォレスト運動」を推進しています。その取り組みと地域産材の利用促進について視察しました。

モデルフォレスト運動は、カナダ発。世界的な広がりを見せるこの運動ですが、日本で参加しているのは、京都府だけと聞き、意外でした。運動の主体は「公益社団法人 京都モデルフォレスト協会」で、会員は、企業や府民、ボランティア団体、農林漁業団体、行政などです。企業の森林づくりへの参加では、38企業が35か所を展開、府民参加型モデルフォレストの推進では、65団体が誕生し、平成25年度には1万人を突破、平成28年度の全国植樹祭に向けて、さらに運動を広めていくそうです。カナダのケベック州との覚書締結や国際シンポジウムの開催など、国際的な取り組みも推進しています。

印象的だったのが、次世代のリーダー養成と世代間交流。人材育成のために府立の林業大学校(京都府林業大学校)を設立し、京都ならではの教育体制で即戦力を育成していました。また、「キッズモデルフォレスト」を推進し、府民の森を拠点に子どもの学習・交流を通して世代間交流にも取り組んでいました。人材不足が大きな課題となっている中、具体的な人材確保のための対策を講じ、次世代を育てる環境を整えて実践している点は、本市も大いに学ぶべきと感じました。

地域産材の活用では、副知事をトップとする組織を設置し、公共建築物での利用促進の基準を設けていたり、土木工事へ積極的に活用していたりして、さまざまな木材利用を図っていました。京都府が整備する建築物のうち、「高さ13m(軒高9m)以下、かつ延べ面積3000㎡以下」の施設は、「原則木造」とし、RC構造などの非木造の施設においても、内装の木質化を推進しています。また、土木工事や公共建築物、公園などの外構工事における資材および仮設資材に木材を利用していました。丸太伏工、木製柵・チップ舗装、木工沈床工、防護柵、型枠、治山ダムなどです。机やいす、ペレット、チップ、バイオマスなどの推進ももちろんのこと、説明をしてくださった職員のみなさんの胸にも木のネームプレートがつけられていました。木材利用の数値目標や取り組み指標を具体的な数値を決めて取り組んでおり、京都府が強い意思をもって森づくりを進めていることが伺えました。

本市では、策定した森林ビジョンに基づき、いろいろな取り組みを進めていますが、その進行の遅さや実効性には、課題があると感じています。京都府の実践を参考に、積極的な取り組みを求めていきたいと思います。

2日目は滋賀県多賀町。駅から多賀大社を通り、町役場まで案内していただきました。木造建築の古い街並みが、ステキな景観をつくっています。各お店の前には、「○○地獄」と名付けられたチェーンソーアートの作品が並び、多賀大社で厄払いをするという趣向。森林資源を活かした観光振興に取り組んでいることがわかりました。店ではない一般町民の方々もこの街並み保存に協力しているのが印象的でした。

琵琶湖の水源となる多賀町は、人口7700人、135㎢の町土の85%が森林(11600ha)です。人工林率61%。滋賀県では森林税の6億円/年を活用して、森林整備にあたっています。幹線の林道は整備されて県内では充実しているそうですが(主に50年代に整備、平成に入ってからは新規整備はなし)、傾斜がきつく、作業道整備は遅れているとのこと。林道の維持管理には、森林環境税は入れられないとのことでした。木材搬出には、県から1000円/㎥、町補助金1000円/㎥)、間伐材仕分け対策には、県補助金が1000円/㎥、森林多面的機能維持交付金には、町から24000円/haが出ているそうです。

特筆すべきは、滋賀県での環境学習。琵琶湖の水資源を守るため、県内8つの施設で森林・林業の体験学習が行われており、県内すべての小学校4年生が参加しています。その1つの施設が多賀町にあり、見学させていただきました。「高取山ふれあい公園自然体験宿泊施設」です。多賀町産木材を利用し、地元の工務店で加工可能な「すだれ梁工法」を採用、視察後まもなく竣工(10月29日)の建物は、木のいい香りが漂っていました。大きな建築物でありながら、地元産木材で地元の人材、技術を駆使した建物に仕上がっていました。開放的な空間と子どもたちが好きそうな屋根裏部屋のような空間が絶妙でした。大滝山林組合が指定管理者となって、この施設を運営していくそうです。

体験学習に訪れていた小学生は、丸太切りに挑戦中。皮をむいた丸太のみずみずしさに驚き、木は生き物であることを実感していました。また、チェーンソー・カービングが行われており、全国から腕に自信のある方々が終結し、作品作りに取り組んでいました。昼食はシカ肉を使った地元のみなさんの手作り弁当。ジビエ料理を売りにしていくそうです。これは獣害対策でもあります。

地域産材の活用では、先の施設のほかに、ランチルームや体育館でも使われており、2学年ずつ机といすを整備したり、選挙用掲示板、お食い初めセット(町制60周年記念)、間伐材のコピー用紙などにも用途を広げていました。木質バイオマスや住宅等への利用も促進。また、港区と木材供給に関する協定を締結したり、滋賀県立大学(「多賀木匠塾」)との連携も進めたりするなど、積極的な取り組みを展開。大学との連携は、すでに12年目、幼稚園の木製遊具など公共施設への実績も紹介されました。

行政だけでなく、湖東地域材循環システム協議会(kikito)を立ち上げ、森林所有者や加工業者、設計士、木質エネルギー業者、市民団体などのネットワークもできており、地域材の安定供給と活用の推進が図られています。津久井産材も紙に加工してくださるとのことでした。

町議会議員のみなさん、町長さんももてなししてくださり、多賀町一丸となって森林資源を活用した地域振興に取り組んでいる姿勢に感銘を受けました。

日本全国、林業や森林整備には課題が山積していますが、その解決に向けて本気で取り組み、打開していく意思があるかどうか、それが重要だと痛感した視察となりました。(2014.10.25)

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